離婚する際、養育費についての取り決めをする夫婦が増えてきていますが、支払われないケースが多いのはご存知ですか?
裁判で支払いが確定したにもかかわらず支払わないで逃げる「逃げ得」が横行しているそうです。
離婚しても親であることに変わりないのに、無責任な話ですよね。
法務省もこの不払い問題を重くみて、支払いを強制する新制度を導入するべく、2016年11月に動き出しています。
この法改正が通ると、養育費の他、離婚や交通事故で生じた慰謝料、損害賠償金の不払いについても、回収されやすくなるようです。
母子家庭の貧困が問題になっているだけに大きな期待が寄せられますが、いつから開始されるのでしょうか?
そして、それまでの間に打てる対抗策は何かあるのでしょうか?
この記事の目次
養育費の不払い問題
1.養育費の支払い率は2割?
「養育費の支払い率は2割」と聞いたことがありますが、これが本当なら低すぎると思いませんか?
養育費の支払いはどういう状況なのか、厚生労働省の「平成23年度全国母子世帯等調査結果報告」から調べてみました。
以下、母子世帯(母親が子供を引き取って育てている世帯)についてのデータをピックアップしています。
●養育費の取り決めをしている割合
・母子世帯の37.7%
そもそも養育費の取り決めをしている割合が低いですね…。
離婚手段別に取り決めている割合をみると、協議離婚30.1%、その他離婚(調停、裁判)74.8%とのこと。
協議離婚の場合の取り決め率の低さは分かるにしても、裁判所を介しての離婚でも4分の1が取り決めをしていないというのが驚きです…。
ちなみに、養育費の取り決めをしなかった理由で多かったのは下記のとおりです。
●養育費の取り決めをしていない理由
・相手に支払う意思や能力がないと思ったため 48.6%
・相手と関わりたくないため 23.1%
・取り決めの交渉をしたが、まとまらなかったため 8.0%
養育費の支払いを受けることは子供の権利であるため、親の都合により「払えない」「もらわない」ということは本来あるべきでない結果です…。
●養育費の受給状況(元夫⇒母親への支払い)
・現在も養育費を受けている 19.7%
・養育費を受けたことがある 15.8%
・養育費を受けたことがない 60.7%
よく取り上げられている「養育費の支払い率2割」というデータは、ここからきているようですね。
養育費をもらえていない子供が約8割もいるなんて、とても悲しいことです。
ちなみに、養育費の取り決めをしている場合(一つ目の項目における母子世帯37.7%について)の受給状況もありました。
●養育費の取り決めをしている場合の受給状況(元夫⇒母親への支払い)
現在も養育費を受けている 50.4%
養育費を受けたことがある 28.7%
養育費を受けたことがない 18.7%
取り決めをしていないよりはマシですが、取り決めをしていても、支払われている割合は50%程度となっています。
それに、約20%が「取り決めたにもかかわらず1回も支払っていない」という…。
これはやはり、支払い強制の手段を早急に整えて欲しいところですね!
●データの詳細はこちら
最新 平成28年度データの状況はこちら
2.「養育費 払わない方法」

え?なに?と思いますよね。
「養育費 払わない方法」や「養育費 払わないとどうなる」などのワードでインターネットで検索している人が結構いるようなんです。
おそらく、養育費を請求されている夫や元夫が検索しているのだと思いますが…。
どうすれば払わないで済むか、支払いを逃れる方法を必死に探し、払わないと罰則はあるのか?財産を差し押さえられてしまうのか?など、自分の身を心配しているのです。
もしかすると、妻の不倫が原因で離婚することになったり、新しい交際相手との間に子供を授かって再婚予定があるのかもしれません。
しかし、どちらの場合も養育費の支払いは免除されるものではありません。
養育費は子供のためのものであり、離婚原因や親の都合は関係ないのですから。
離婚問題の色々な苦しさからこういう検索をしたとしても、最終的には「子供のために養育費を支払う」という結論に至ってくれることを願います。
子供の生活費となる養育費、少しでも多くもらうには?
法務省が新制度創設に動き出した
1.新制度ではどうなる?
新制度では、「養育費の支払いがされずに強制執行をかける際、相手方(債務者)の預貯金口座を裁判所を通じて特定できるようにする」とされています。
どういうことかと言うと…。
現在の強制執行方法の問題から見てみましょう。
現行の「強制執行」制度では、養育費を支払わない相手方(債務者)の財産を裁判所が差し押さえることができると定められています。
でもそのためには、支払いを受ける側(債権者)が相手方の現住所や財産の所在(預金口座)を特定しないと差し押さえができないようになっています。
とはいえ現実的には、養育費の支払いから逃げている相手方なので、住所や預貯金口座を変更している可能性があるし、元夫本人に口座を聞いたとしても教えてくれるはずありません。
つまり、これって現実的にはなかなか厳しいものなんです。
仕方なく離婚時の情報を頼りに「〇〇銀行の◇◇支店にあるはず」と強制執行を申し立てたとしても、そこに口座がなかった場合、強制執行を実行することはできないのです。
費用と時間、労力をかけて申し立てたにも関わらず、不発に終わってしまうこととなると大変なショックですよね。
そこで、先ほどの「裁判所を通じて相手方の預貯金口座を特定できるようにする」という新たな制度が導入検討されることとなったのです。
この制度が通れば、裁判所が金融機関の本店に照会し、口座があれば支店名などを明らかにすることができるようになります。
債権者の「泣き寝入り」や債務者の「逃げ得」を減らすための大きな前進となります。
2.新制度はいつから開始される?
法務省は2016年11月18日から議論をスタートさせていますが、改正案の国会提出は2018年頃になる見込みとのことです。
そのため、現段階では、新制度の開始は早くても2018年になるでしょう…とまでしか言えません。
不払いに悩んでいる人が多く、貧困問題も重大になってきているため、1日でも早い施行に期待が寄せられますね。
すでに未払い養育費がある方は要チェック!
今できる養育費不払い対策や方法は?
1.公正証書を作成しておく
離婚をする際、養育費や慰謝料などの金銭の支払いについて取り決めた内容を「公正証書」にしておくことです。
公正証書にするには、労力やお金がかかりますが、いざという時の効力や手間に大きな差が出てきます。
この時注意したいのが、公正証書には必ず「強制執行認諾約款」を入れておくことです。
強制執行認諾約款とは、「支払い義務者(債務者)が支払いを怠った場合には、ただちに強制執行を受けることを了承している」ということを示すものです。
この文言を公正証書に入れておくと、相手方の支払いが滞った際に、裁判を起こして勝訴を得る必要なく、すぐさま強制執行をすることができるのです。
ちなみに、離婚調停の場合は、調停成立時に公正証書と同じような効力を持つ「調停調書」が作成されるため、自分で公正証書の作成は必要ありません。
2.夫の預金口座を押さえておく
離婚する前に、夫の預金口座を把握しておきましょう。
強制執行をかけるためには、相手の財産が入っている銀行名と支店名が必要になりますが、離婚してからこの情報を入手するのはとても難しいものです。
離婚後に預金口座を変更されてしまう可能性もありますが、できる限りの手は打っておくにこしたことはありません。
養育費請求を成功させるには知識の備えが大切!
さいごに
養育費の支払い率の低さは、離婚を考えている人にとっては気がかりな問題だと思います。
強制執行を行いやすくする制度改正が早急にできることに期待が寄せられますが、まずは、離婚前に自分でできる手をしっかり打っておくことが大切です。
また、養育費の話し合いは揉めやすいものではありますが、なるべく夫との関係を良好に保てるように(悪化させないように)しておくことも、養育費不払いを防ぐポイントの一つと言えます。
話し合いの際は、「養育費=子供の生活費」であることを話の中心に据えて、冷静に、前向きに考えるように持ち掛けましょう。
とはいえ、これがなかなか難しいんですけどね(*_*;
夫に「お前は金の亡者だな!」なんて罵られてしまう人も多いようですよ…。
夫側からするとどうしても「妻に支払う」ものに思えてしまうのでしょうか。
先日、区役所に行く用事があったついでに、窓口で養育費の取り決め方や公正証書の作成方法についての説明を聞いてきたのですが、そこの担当の方も「そういう旦那さんは多い」と言われていました。
そして、「それは旦那さんが間違ってる。あなたは間違ってないし、金の亡者なんかじゃないわよ」と言ってもらえて、ちょっと救われました。
そうなんです。私も旦那に罵られた一人なんですよね…(-_-;)
ですが、子供のために負けてはいられません。心がポッキリ折れそうにはなりますが、屁と思って立ち向かっていきたいと思います!
※「養育費」に関する記事はこちらにまとめています。
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