離婚時に養育費の金額を決める際、「養育費算定表」を参考に話し合いをする夫婦が多いと思います。
2017年には、これまでの養育費算定表の金額よりも増額された「新算定表」も日弁連から出されていますよね。
ただ、離婚後の母子家庭が実際に養育費をもらっている割合は2割といわれています。
せっかく話し合って決めた養育費も、払ってもらえなければ意味がありません。
養育費をもらえている約2割のシングルマザーの特徴を探ってみました。
母子家庭における養育費相場と期間の実際は?
厚生労働省の「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」をみると、養育の相場はこのようになっていました。
●子供の人数別養育費の相場
養育費を現在も受けている、または、受けたことがある世帯で、月額定額でもらっている人の平均金額です。
1人 38,207円
2人 48,090円
3人 57,739円
4人 68,000円
この金額ってどうなんでしょう。「こんなにもらえるんだ」「これだけ?」
感じ方はそれぞれだと思いますが、問題なのは、養育費をもらえているのが母子家庭の約2割だけということです。
「月額7万円で養育費の約束を取り付けた」と喜んでいたとしても、払ってもらえなければ0円…。
養育費支払い率の低さから、いつ自分が払ってもらえない8割側になってもおかしくありません。
ちなみに、ちょっと朗報。
最近、養育費の支払い率がアップしました!
↓↓
●母子家庭における養育費の支払い状況
平成23年 | 平成28年 | |
現在も養育費を受けている | 19.7% | 24.3% |
養育費を受けたことがある | 15.8% | 15.5% |
養育費を受けたことがない | 60.7% | 56.0% |
19.7%⇒24.3%ということで、わずかながらですが養育費の支払い率が上昇しているのは良い傾向といえますね。
次に、支払い期間です。
支払い期間は、「大学卒業まで」などと決める人が多いと思いますが、こちらも継続して払ってもらえなければ意味がありません。
実際の養育費の支払い状況は…
●母子家庭における、離婚後の年数別養育費の受け取り状況(人)
0~2年未満 | 2~4年未満 | 4年以降 | |
現在も受けている | 120 | 88 | 217 |
過去に受けたことがある | 23 | 25 | 217 |
受けたことがない | 141 | 121 | 661 |
離婚後4年以降でも養育費をもらえている人の人数が多くなっています。
ですが、「4年以降」ということは、
離婚後5年目、6年目…20年目なんていう方も含まれるため、そもそもの人数が多く、他の年数との人数比較は難しいものがあります。
そこで、離婚後の年数別に、割合パーセントで計算してみるとこのようになりました。
●母子家庭における、離婚後の年数別養育費の受け取り状況(%)
0~2年未満 | 2~4年未満 | 4年以降 | |
現在も受けている | 40.3% | 37.3% | 18.9% |
過去に受けたことがある | 7.7% | 10.6% | 18.9% |
受けたことがない | 47.3% | 51.3% | 57.6% |
こう見るとどうでしょう…
離婚から「0~2年未満」
・現在も養育費をもらえている人が40.3%。
・2年未満で早くも養育費をもらえなくなっている人が7.7%。
・離婚後まだ年数が浅いにも関わらずもらったことがない人が47.3%…。
離婚後「4年以降」
・現在ももらえているという現在進行形の人が18.9%に激減。
・過去にもらったことはあるが今はもらえていない人が18.9%に増加。
・4年以上経っても一度ももらったことがない人が57.6%。
この集計は、特定の母子家庭の動向を追っている数値ではありませんが、離婚後年数が経つにつれて養育費が支払われなくなる確率は高いといえそうです。
さらに厳しいことを言うと、現在ももらっている人や過去にもらったことがある人が、毎月もらえていたかどうかは不明です。
不定期の支払いや、1回だけの支払いでもカウントされていると考えられるので、実際の支払い総額(受け取り総額)はかなり低いと考えられます。
元夫が再婚すると養育費はどうなる?
養育費をもらえている母親の特徴は?

養育費をもらっている人ともらえていない人の違いはどこにあるのでしょうか?
養育費をもらえている24%の人の特徴を探してみました。
●離婚方法別 養育費の支払い状況
協議離婚 | その他の離婚 | 未婚 | |
現在も受けている | 22.4% | 41.5% | 7.8% |
過去に受けたことがある | 14.3% | 23.6% | 9.4% |
受けたことがない | 59.0% | 30.2% | 79.4% |
不詳 | 4.2% | 4.7% | 3.3% |
計 | 100.0% | 100.0% | 100.0% |
離婚した方法別に養育費の支払い状況を見ると、養育費を受け取る率が高いのは「その他の離婚」です。
・協議離婚
夫婦の話し合いで離婚を決める日本で最も多い離婚方法
・その他の離婚
家庭裁判所の調停や裁判で離婚を決める調停離婚や裁判離婚
調停離婚や裁判離婚の養育費の支払い率が高い理由は、調書が作られる点にあります。
裁判所内で話し合った内容(財産分与や親権、養育費、面会交流など)をまとめた調停調書や裁判調書には、約束事が守られなかった時、つまり養育費の支払いが行われなかった時などには、裁判所から履行勧告や履行命令をしてもらうことができるんです。
そのため、養育費の支払い率が高くなっていると考えられます。
ちなみに、協議離婚でも「公正証書」と言われる書類を作成することができます。
ただ、取り決め内容は夫婦で話し合って決める必要があり、そのハードルの高さから、協議離婚で公正証書まで作成する人の割合は少なくなっています。
●養育費の取り決めをしている割合
協議離婚 | その他の離婚 | 未婚 | |
取り決めをしている | 37.8% | 79.6% | 13.3% |
取り決めをしていない | 59.0% | 17.6% | 83.9% |
不詳 | 3.2% | 2.8% | 2.8% |
計 | 100% | 100% | 100% |
離婚方法別の養育費の取り決め状況はこのようになっています。
なんとなく、先程の支払い状況の「現在も受けている」+「過去に受けたことがある」の割合と近しい数値になっていると思いませんか?
つまりは、養育費を払ってもらうには、きちんと養育費の取り決めをすることが大切と言えそうです。
ただ、養育費の取り決めをしていない人には、「しなかった理由」や「できなかった理由」があるようです。
●養育費の取り決めをしなかった理由
相手と関わりたくない | 31.4% |
相手に支払う能力がないと思った | 20.8% |
相手に支払う意思がないと思った | 17.8% |
その他 | 7.1% |
取り決めの交渉 がわずらわしい | 5.4% |
取り決めの交渉をしたが、まとまらなかった | 5.4% |
相手から身体的・精神的暴力を受けた | 4.8% |
不 詳 | 2.9% |
自分の収入等で経済的に問題がない | 2.8% |
現在交渉中又は今後交渉予定である | 0.9% |
子どもを引き取った方が、養育費を負担するものと思っていた | 0.6% |
相手に養育費を請求できることを知らなかった | 0.1% |
離婚した後まで「相手と関わりたくない」という理由が最も多くなっています。
たしかにその気持ちは分かります…。
特にお金の話は、ただでさえ険悪な雰囲気がただよう離婚間際夫婦の間では、話し合いがこじれやすいものです。
それが子供のための養育費とはいっても揉めます。
私も夫婦で話し合える状態ではなく離婚調停を頼りました。
ちなみに、すでに離婚してしまった方でもまだ打つ手はありますよ。
養育費の取り決めをする人が増えています
●離婚後年数別、養育費の取り決め状況
0~2年未満 | 2~4年未満 | 4年以降 | |
取り決めをしている | 53.0% | 47.0% | 40.3% |
取り決めをしていない | 45.6% | 53.0% | 56.4% |
不詳 | 1.3% | 0.0% | 3.3% |
離婚からの年数が浅い人ほど、養育費の取り決めをしている割合が高くなっています。
つまり、離婚時に養育費の取り決めをする人が増えてきているということです。
養育費の支払い率が上がっているのは、取り決め率が上がっているためといえそうですね。
●養育費についての相談相手は?
親族 | 47.7% |
家庭裁判所 | 17.1% |
弁護士 | 15.7% |
知人・隣人 | 9.9% |
県・市区町村窓口 | 5.3% |
その他 | 3.4% |
養育費相談支援センター | 0.4% |
母子・父子福祉団体 | 0.3% |
NPO法人 | 0.1% |
相談していない | 45.5% |
不詳 | 3.4% |
養育費について相談する相手として最も多いのは「親族」です。一番身近で相談しやすい相手ですよね。
次に多いのは、離婚調停や養育費調停をする「家庭裁判所」です。中立な立場で夫婦の間に立ち、話し合いを進めてくれます。
次に「弁護士」です。費用はかかりますが、自分の味方になって交渉を進めてくれるためとても心強いですね。
●養育費の取り決め結果
平成23年 | 平成28年 | |
額が決まっている | 72.4% | 80.0% |
額が決まっていない | 27.6% | 12.0% |
1世帯平均月額 | 32,238円 | 32.550円 |
「養育費は毎月いくら」と額を決めている割合も上がってきています。
これも養育費の支払い率が上がっている理由でしょう。
「その時払える金額」や「会った時に」「必要な時に」などの曖昧な決め方をしていては、「今は無理」などと逃げられてしまいますし、後で未払い分としての請求も難しくなります。
養育費の取り決めをするにあたっては、
「毎月○日に、○万円を、○○銀行に振り込む」ときっちり決めておくのが基本ですよ。
さいごに
離婚後の養育費をきちんともらうには、取り決め方が重要となります。
支払い条件を細かく取り決め、調書や公正証書を作成するようにしましょう。
ちなみに、離婚届には養育費取り決めの有無について記入する欄があります。
「離婚届にも書かなきゃいけないから決めよう」と言って、旦那さんに養育費交渉を持ちかけてみるのも良さそうですね。
(実は記入は必須ではありませんが)、
公的文書に記入するとなれば「男の見栄」「社会的な体裁」から話し合いに応じてくれる確率は高いかもしれません。
コメントを残す