「離婚したら養育費をもらえる」というのは常識的なようで、現実は、母子家庭への養育費の支払い率は全体の2割です。
つまり、離婚した10組の子あり夫婦のうち、養育費が支払われているのは2組で、残り…というか、離婚した夫婦のほとんどである8組は養育費をもらえていないのが現状です。
子供の父親である元夫が養育費を払わない理由は何なのでしょうか?
実は、支払い率が2割にとどまる理由には、父親側にだけ責任があるわけではなく、養育費を請求できない妻の事情もある様です。
養育費を払わない元夫の理由や心理は?
元夫が養育費を払わない理由には、大きく分けると「払いたくないから」と「払えないから」の2つがあります。
養育費を「払いたくない」元夫

養育費を「払いたくない」というケースには、支払い拒否という強い意思があります。
夫婦関係のこじれからそういった気持ちになるのも分かりますが、それを理由にするのは子供がかわいそうですよね。
中には、元夫のわがままな理由によるものもあります。
●子供と面会させてもらえないから
面会交流を拒否された、子供と会わせてもらえないから養育費は払わない…。
たしかに、子供に会いたいのに会えないのは辛いことです。
でも、それでも、養育費と面会交流は別物なので、「子供に会えないから払わない」は、養育費を払わない理由にはなりません。
養育費を払うことは父親としての愛情や責任を示すことにもなるので、その上で、家庭裁判所に面会交流についての調停の申し立てをして話し合いの場を持ちましょう。
●親権をとられたらから
母親側に親権を取られたことで、「もう自分の子供ではない」と思う元夫もいるようです。
親権を持たない親もずっと子供の親であることに変わりはないので、養育費を払わない理由にはなりません。
子供を相手に取られたから自分は親ではなくなったというのは、何だか子供をモノのように考えているようで悲しいことです。
●親権も養育費も自ら拒否
「独身に戻りたい」「一人になりたい」と親権も養育費も放棄する元夫もいるようです。
子供が産まれて親になった瞬間から、親でなくなることは一生ないのに。
せめて離婚するのは許したとしても、子供の親としての責任は果たしてもらいたいものです。
●妻にお金をとられるのがイヤ
養育費は「妻に支払う」という印象が強く、「妻にお金を取られる」「妻に良い思いをさせてしまう」という思いから支払いを拒否する元夫もいます。
養育費の振込先を子供名義の口座にして、目的や使い道をどんなに説明したとしても聞き入れてくれなかったり、仕事を辞めて収入を失ってまで払わない人もいます。
いくら元妻が憎くても、子供の養育費は無関係なのに。
●再婚相手にバレたくないから
離婚歴を隠して再婚し、新しい妻にバレたくないがために養育費の支払いを一方的にやめてしまうケースもあります。
再婚後の家庭に子供が産まれたのをきっかけに支払いが途絶えるケースも…。
経済的に苦しくなるという理由もあるのかもしれませんが、そこは減額の相談があるべきで、養育費の支払いをゼロにできるものではありません。
養育費を「払えない」元夫
養育費を「払えない」理由には、払いたくても払えないという経済的な事情があります。
●転職、失業して払えなくなった
転職して給料が下がったり、失業で無職になり払えなくなる元夫もいます。
養育費を払わなくていいように故意でそのような状況に陥る人もいますが、離婚や子供と離ればなれになったショックから精神的に病んで仕事ができなくなってしまう人もいるようです。
●再婚相手に止められたから
再婚相手に養育費の支払いをやめさせられるケースもあります。
新しい奥さんからの「離婚した家族と私たちどっちが大切なの?」「養育費なんか払ってるから生活費が足りないのよ」など。
今度こそ失敗したくない元夫にとって、新しい奥さんからの言葉は絶対なのかもしれませんね。
養育費を請求しない妻の理由は?
養育費をもらっていない元妻(母親)にも、あえて請求しないでいる人と、請求したいけどできないでいる人がいます。
厚生労働省が調査した「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」によると、母親が養育費を請求しない理由のランキングはこのようになっています。
2位:元夫に支払い能力がないから(20.8%)
3位:相手に支払い意思がないから(17.8%)
4位・5位同率
取り決めの交渉がわずらわしいから(5.4%)
取り決めの交渉をしたがまとまらなかったから(5.4%)
6位:相手から身体的・精神的暴力を受けたから(4.8%)
「元夫と関わりたくない」という気持ちはよく分かります。
離婚するくらいなんだから会いたくないし、連絡も取りたくないですよね。
子供がいる夫婦の離婚の場合はなおさらです。
なぜなら、子供がいるのに離婚を決めたということは、相当の事情があるということですから。
そんな相手と離婚後まで関りを持ちたくないと思うのは当然です。
ちなみに、上記のアンケートは「最も大きな理由」の回答をもらっています。
複数回答可だったら、ほとんどの項目にチェックをつけたくなるくらい、本当の事情や思いは様々だと思います。
面会交流を請求されるのが嫌だから養育費について交渉できないでいる…というのも良く聞く話です。
養育費を払ってもらうように約束していたのに、連絡先を変えられて音信不通になり支払われなくなった…という話もあるあるです。
こうした事情も、養育費の支払い率を下げている原因になっているのでしょう。
あえて請求しないのならまだしも、養育費をもらいたいけど請求できないでいる人はこれから少しでも減っていけると良いですね。
養育費の支払い割合最新データ
厚労省の「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」によると、支払い率が少し上がっていました。
●母子家庭における養育費の支払い状況
平成23年 | 平成28年 | |
現在も養育費を受けている | 19.7% | 24.3% |
養育費を受けたことがある | 15.8% | 15.5% |
養育費を受けたことがない | 60.7% | 56.0% |
養育費の支払い率は2割と言われてきましたが、平成28年は24.3%にアップしていました。
市区町村での相談窓口設置や、メディアで取り上げられるなどの効果から、養育費についての認知が少しずつ高まってきているのかもしれませんね。
今もらえていない人も諦めずにもう一度行動を起こしてみるようおすすめします。
離婚後の養育費請求を専門にしている弁護士事務所もあるので、まずは無料相談で今後の動き方などを相談してみるのも良いと思います。
●養育の支払い額
ちなみに、養育費の支払い額は、子供の人数別にみると次のようになっています。
支払額 | |
1人 | 38,207円 |
2人 | 48,090円 |
3人 | 57,739円 |
4人 | 68,000円 |
※集計対象:「養育費を現在も受けている」または「受けたことがある」世帯で、養育費の支払い額の取り決めがある者
さいごに
養育費の支払い率が低い原因には、元夫(父親)側の拒否だけでなく、元妻(母親)側があえて請求しないでいるという事情もあります。
元夫と関わりたくないという気持ちは分かりますが、子供により良い生活をさせてあげるためにも、父親から見捨てられたわけではないという愛情を伝えるためにも、養育費をもらえるように取り決めることは大切です。
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